2012年3月5日月曜日

お久しぶりに映画のことでも パート2

そろそろ「です・ます」調の書きぶりに飽きてきたので変えようと思います。

 実は先日投稿した『ヒューゴと不思議な発見』と同日に『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』という映画も鑑賞した。これは題名の一部をQueenの曲名からパクっているという事実を差し置いても、アイドル映画であることが一目瞭然で、チケット売り場で「AKB一枚」と男一人で発言することがかなり憚られる映画であることは間違いない。ただし、事前の調べによると批評家たちからの「映画としての」評価が割合高かったので、「まぁオタ以外にもチケットを買う人は大勢いるに違いない。」と余計な計算をしてから、チケを購入した。(まぁかく言う僕もアイドルは嫌いでないので、AKB観たさで観に来る客と大差ないわけだが。。)すると驚いたことに、明らかにオタっぽい客はほとんどおらず、語弊を恐れずに言うとそれなりに「成熟している」ように見える人たちがほとんどであった。僕の余計な計算は思いのほか当たっていたのだ。 そして、その客層が物語るようにこの映画は丁寧に撮影編集された上質なドキュメンタリーであったと思う。通常ならばアイドル映画というと、当のアイドルの魅力を最大限に見せるように撮るはずであるが、この映画ではむしろ逆で、客席でアンコールと叫ぶファン達やアイドルで一儲けたくらむ大人達によるプレッシャーが彼女たちを精神的にも肉体的にも蝕ばむ様子をありありと映し出す。そして観客はスクリーン上で傷つく彼女たちを観て面白がるという、大変ドSな仕上がりになっているのだ。 たとえば、もっぱら白眉だといわれているのが総選挙のシーン。ディフェンディング・チャンピオンであるところの大島優子が前田敦子に王座を奪還された際、ステージ上では飽くまで彼女が気丈にふるまい前田を祝福する光景が映される。この大島優子の性格こそが彼女の持ち味であり、ファンに支持されるゆえんであろう。ところがステージが平和のうちに終了し、メンバー全員が裏へはけた後の大島には笑顔がなく、雰囲気を察した篠田が彼女に近づいた瞬間・・・・ どびゃーーー と泣き崩れる。この瞬間、オタは今までの自分たちの応援が裏で彼女に壮絶な圧力を加えていたことに反省を迫られたはずである。 映画ではこのような観ていて気まずくなるようなシーンが多々ある。主要メンバーが舞台裏で失神しているにもかかわず、アンコールによってステージに戻され、歌い、踊り続ける(歌ってはいないが・・)。そして彼女たちはこのような苦痛によって、泣く。泣く。そして泣く。これが2時間続くのである。
 ところで思うに、映画において登場人物が何らかの苦労を背負うとき、その苦労にある種必然性がなければならない。さしあたり、①ある行為によって苦労をしなければ生活ができない、または将来のステップアップにマストの条件であるという必要性に基づいたインセンティブ。あるいは②苦労をしてでもその行為が「好き」であるというインセンティブが考えられる。この点、二十歳を超えた主要メンバーにとってAKBというグループでアイドル活動することが自身の身を立てる手段であり目的なのであるから、苦労の必然性が明快であり、随所に出るメンバーの号泣するシーンには意味があるというものである。またボロボロになりながらも前田敦子のステージへの執念を見せる姿も理解できる。
 しかし許せないのは、映画の後半に出てくるAKB内の「チーム4」という新人ばかりが集まったグループの活動のシーン。このシーンにおいて当の新米メンバーたちは、大島などのメンバーと同様にことあるごとに号泣する。なぜこのシーンが許せないのかというと、彼女たちには前田や大島らと違ってAKB内で苦労する理由があるように見えないからである。本当に彼女たちにとって「AKB48内で」努力する必要性があるのだろうか、あるいは本当に彼女たちはアイドル活動が好きなのだろうか。新米メンバー達の涙の動機はすでにお茶の間で人気となっている主要メンバーよりも丁寧に描かれなければ空回りするのに、それがない。その結果・・・



お前らの涙、ぺラッペラやな!!



と感じざるを得なかった。謹慎中のメンバーが帰ってきたぐらいで号泣するんだったら、アイドルやめればいいじゃん。そっちのほうが楽だろ。時間の都合で、あまり有名でないメンバーの内面に迫るところまでは描けないのなら、チーム4のシーンは全部要らなかったように思われる。


 面白いところはいっぱいあったんだけどなー。たとえば総選挙の1位と2位がいよいよ発表されるという場面での、前田敦子に対するショット。そこに偶然一緒に映った横のメンバーがなぜか祈っている。絶対に名前が呼ばれるはずもないメンバーがなぜ手を組んで祈るんだよww派閥でもあるのか?  あるいはステージ裏でボロボロになって倒れる前田を映したシーン。そこで偶然バックに映った他の無名メンバー達。出番が少なく体力も残っているため立ちつくして、倒れる前田を見る。倒れる前田に可哀そうに思う観客とは裏腹に、これらのメンバーはむしろ「倒れるまで出番があるなんて、うらやまー。」と思っているに違いない顔をしている。こういう偶然に可笑しいもの映るというのがドキュメンタリーの良さだったりするのかも。


 まぁトータルで考えたら面白かった。これで僕の押しメンである秋元康はさらに大金を稼いだのである。まことにうらやましい話である。

0 件のコメント:

コメントを投稿