2012年3月2日金曜日

お久しぶりに映画のことでも

お久しぶりです。ブログを始めたと言いながら数回更新したのみで一年半も放置してしまいました。三日坊主とはこのことか。以前のポストが昔すぎて、内容が青くてとても目が当てられません。
 そんな怠惰な性格をネットに晒しまくっている僕ですが、この後に及んでまた日記を書こうかと思ったのは、一つに割と暇であること、二つに今日たまたま見た映画について一言述べたい気分になったからであります。

『ヒューゴの不思議な発明』
 ご存じスコセッシ監督。トレイラーを見る限り、モロにCG感が出ている映像に走り回る少年といういつもと違う雰囲気に怪訝な気分になります。当の本人も「(撮影監督のロバート・)リチャードソンが、まるでフィルムで撮ったような素晴らしい世界を作り上げてくれた。やっぱり新しい技術を学習することは大事だと思ったよ。」などと角をヤスリでこすりまくったような丸い発言をしていたため、期待半分と(ヒップホップ用語を用いて本当かっこうが悪いですが)セルアウト感が作品に現れていないかと心配半分を抱いて観に行ったわけでありますよ。
 舞台は第一次大戦後のフランス(だと思う)で、主人公のヒューゴが父親を亡くと日々孤独にさいなまれているという初期設定。父が拾ってきた壊れたゼンマイの人形(ほぼロボット)だけが心のよりどころであり、それを修理するために必死に生きている。そんな中、当の人形と深い関わりのあるらしい老人に出会う。その老人はどうやら実在した映画監督ジョルジュ・メリエスという設定のようで、彼は自身の映画に対する愛とは裏腹に戦争を経て誰も映画を観なくなったことにひどく絶望している。そしてそれを知ったヒューゴは人形の修理を通じて、老人の閉じきった心を開こうと試みる・・・
 まぁありがちですし、プロット的に首をかしげた箇所はありました。まずヒューゴの父親の死に方ががちょっと雑です。父が部屋の扉を開けたら火事の炎がボー・・・次のカットで父死亡。これだけではあまり悲劇に見えず、その後父を亡くした主人公の孤独があまり深刻に見えない。。またそもそも、話の肝であるヒューゴのネジ巻き修理とメリエスの映画愛復活の過程が上手く噛みあっていないようにも感じました。
 しかしながらそれでもこの映画を観終わって半日経った現在でも、この映画のことが僕の頭から離れません。というのも、物語中盤からスコセッシの映画愛(というかフィルム愛)と強烈な孤独という表裏一体の精神性が透けて見えはじめたからです。一方では、背が低く全くモテない映画オタクの少年スコセッシの孤独をヒューゴの孤独として描き、他方で自らの人生を捧げたフィルムがデジタルによって駆逐される現実、あるいは好きで好きで仕方のなかった映画が自分が老いたころにはもはや社会にとってどうでも良くなってしまった現実に対する絶望をメリエスの心の閉鎖として描いています。そう考えると、一方でヒューゴが「修理」という自らの情熱を追求し、しょぼくれたメリエスを復活させて社会における居場所を見つけた瞬間、あるいは他方で、メリエスが一握りでも自己の作品に深く共鳴する人がいることを認識し再起する瞬間などは、スコセッシの強いメッセージを感じずにはいられなかったのです。
 映画にせよ何にせよ一つのものに情熱を傾け、それが己の人生すべてを捧げても良いという極まで達すると、それ以外のたとえば恋人、家族、友人を持って適当に幸せを得るようなことはその人にとってあくまで些末なことにすぎないのでしょう。しかし、同時にその情熱に何者も共鳴しなければ、その人生は強烈な孤独というおまけ付きで空回る危険を常にはらんでいるはずです。このような深刻な不安に対してスコセッシは、「いやいやむしろ逆www お前自身の追求こそがお前が社会と繋がるチャンネルじゃね?」とでも言っているかのようでした。作中、ある映画史家がメリエス宅を訪れて、しょぼくれメリエスに「幼い頃からあなたの作品全部観てますよ。」と感慨深げに語るシーンなんかはもう。。図らずも映画館で号泣してしまいました。
 そしてフィルムに対する情熱をデジタルのしかも3Dで映すという。。。おしゃれすぎるやろ、その作り。インタビューでは上のような暢気なことを宣いつつ映画は「フィルムなめるなよ。」とでも言いたげな内容で燃えます。
 ちなみに、駅の公安役に『ブルーノ』でおなじみサシャ・バロン・コーエン(最近なぜかチョムスキーと対談したとかいう)が出てきたり、作中に出てくるギター弾きが実はジャンゴ・ラインハルト(ギタリストなら皆知っているレジェンダリーな音楽家)という設定だったりとそういう細かいところもまた面白い。ジャンゴ・ラインハルトって・・どんな設定www
 もちろん3Dの効果が最大限に活きるような映像だったし、その点でも観る価値があります。関係ないですが、『アバター』のジェームズ・キャメロンがスコセッシに「もっともすばらしい3D映画だ」と上から目線(と思われる)で言ったらしいですね。ピラニア3Dについては「こんな映画に3Dを使ってほしくない。」などの発言もしていただけに、彼の開祖としての振るまいっぷりが目につきます。
 

そんな感じでこの映画はおすすめです。月世界旅行か、某貴族と観た記憶が・・・

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